今年2月上旬、私は埼玉県大宮市に一人向かいました。新幹線と在来線を乗り継いで約3時間、自宅を午後に出発してホテルに到着したのは夕方です。初めて訪れる土地、どんな街が待っているのかワクワクした気持ちが大きくなってきます。車窓からさいたまスーパーアリーナが見えたときは、「すげー、これが本物か」と有頂天に。
目的は「1日で一気に売れるようになる12時間セミナー」を受講するためです。タイトルだけを聞くと、ちょっと胡散臭く感じませんか(笑)。最初にこの情報に触れたのはフェイスブック広告、少し疑いながらも徐々に気になり始めます。一度は見送っても、結局またそこに辿り着いてしまうのです。
当時の私は営業所長、新人メンバーを育成していく立場です。しかも新人を説得して採用したのが私自身、10年以上勤務した会社を辞めて転職を決意してくれました。何としてでも成功させたい気持ちが、私に重くのしかかります。業績が思うように残せず、彼にどんな関りをするべきなのか苦境の中にいたのです。
「きっと、打開策があるはずだ」と、気づけば藁をもつかむ思いで電車のホームに立っていました。受講料も決して割安ではなく、妻にも言い出すことができませんでした。内緒にした分、余計にこの学びに賭ける思いが特別なものになります。私自身の学びが、彼の成功に繋がることを信じながら。
ホテルに到着してすぐ、夕食を済ますために外出。すっかり辺りは暗くなっていて、賑やかな街の明かりが目を覆います。さすがは大宮、私が住んでいるところよりも随分栄えています。つい気分が高揚してしまって、駅周辺の電飾看板を写真撮影しまくり。
ホテルに戻った後も、気分が高ぶっているからなのか、翌日受講することへの緊張なのか、いつまで経っても寝付けない夜が続きました。そのまま寝たのか寝てないのか、よく分からない状態で朝を迎えます。どんな状況であれ、いよいよ本番。会場に向かう足は一歩一歩が重く感じます。
朝10時から受講開始。そこからの12時間にわたる学びの時間は、集中と緊張とプレッシャーであっという間に過ぎました。再びホテルに戻ってベッドに横になると、「本当にこれで良かったのかな…」「メンバーを成功に導けるかどうか…」と不安と恐怖がこみ上げてきます。
現在メンバーはいません。なぜなら、業績不振で退職してしまったからです。私の力及ばず、彼を成功に導くことができなかったのです。彼は別れ際に、「この仕事を経験できて良かった」と私に言ってくれました。罪悪感でいっぱいだった心が、その言葉でスーッと軽くなるのを感じました。
その後、私は営業職に戻ります。今は全く違う営業手法を模索中です。そのきっかけになったのは、この出来事があったからなのです。大宮で学んだことは、それまでの考え方を一変させるものでした。おかげで、毎日が自分の夢に少しずつ近づいている実感があります。
落ち着いたら、また彼と再会したいと思います。もちろん苦悩に満ちていた営業所長ではなく、新しい河村直紀として。彼もきっと、今頃は新しい自分を発見して頑張っていることでしょう。











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