書店で「あなたが僕の父」というタイトルを見かけたとき、気がつけば私はその本を手に取っていました。私と父は、もう8年もの間、絶縁状態が続いています。父は現在76歳。あと2か月半で77歳になります。80歳が近づいてくることに、どこか切なさや寂しさ、複雑な思いが入り混じってくるのです。
「このままずっと、この関係でいいんだろうか?」
そんな問いが、最近の自分の中で静かに繰り返されていました。誰かに相談する気にもなれず、いや、相談したくない。そんな気持ちでぼんやりとしていた中、この本と出会ったのです。もしかしたら、ここに何かヒントがあるかもしれない。そう思って、私はじっと表紙を見つめていました。
物語の主人公は、那須野富生・40歳。父親は、那須野敏男・78歳。父の車が凹んでいるシーンから始まります。最初の数ページを、何度も立ち読みしていました。私が知りたかった「父と息子の関係」が、この物語の先にあるような気がしたのです。「もっと先を読みたい」――そう思った私は、迷わずレジへと向かいました。
私はずっと、心の中のモヤモヤから解放されたかったのです。その答えを求めるように、必死でページをめくっていました。子が親を気にかける気持ち、親が子に注ぐ愛情。それは特別な場面ではなく、日常のさりげない風景の中に描かれていました。
読み終えたのは、いつものショッピングモールのフードコート。決まって座る窓際の席。周囲はにぎやかなのに、なぜか音が遠く感じられました。心の中だけが、静まり返っていたのです。まるで別の世界にいるかのような感覚。それは、私がずっと探していたものの輪郭が、ようやく見えてきたからなのかもしれません。
私が生まれて52年。あと1か月で53歳になります。つまり、それだけの年月、父と私は「父と子」であり続けているわけです。何を当たり前のことを…と思われるかもしれませんが、私はその当たり前を見失っていたのだと思います。時間ばかりが過ぎていく中で、焦りばかりが募っていたのです。
どんな過去があっても、どんな想いが交差しても、河村直紀は、父親の息子なのです。これからも、ずっと。階段を下りる自分の足音が、父にそっくりだと気づくことがあります。きっと、これからもっと似てくることが出てくるでしょう。それでいいんです。親子なんだから。
「お父さんの話、もっと聞かせてよ」――これは、本の帯に書かれていた言葉です。私が父を思うように、父も私のことを想っているのかもしれません。私も、知りたいのです。父のことを。











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