今から25年ほど前、私と当時の同僚はテレビ出演をしました。その番組とは「欽ちゃんの第58回全日本仮装大賞」。日本テレビ系列で全国放送されるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。応募総数5799組の予選を突破して、なんと!出場枠40組の中に入ったのです。
きっかけとなったのは、同僚からの熱心な誘い。昼食が終わって休憩をしていると、「校長(当時の私の役職)、これ一緒にやってみませんか?」、真剣な表情で封書を差し出してきました。薄緑色の縦長封書には、放送局と番組名が書かれていて状況をすぐに把握することができました。
私は間髪入れず、「いいよ!なんだか楽しそう!」と快諾。この時点では、まさかテレビ出演になろうとは夢にも思っていませんでした。後から知った話ですが、同僚は私に声を掛けるのにかなり勇気が必要だったと言います。同僚から見たら私は上司なので、叱られることを恐れていたようです。
この日を境に、私と同僚は毎日コミュニケーションを取るようになりました。もちろん仕事の話はほとんどなく、仮装大賞のアイデアを練る話が中心です。「校長、噴火を仮装するのはどうですか?」と、同僚の目がキラキラしています。想像もつかない発想ですが、直感的にできそうな気がしました。
週末になると、自宅近くの駐車場で練習を始めます。私と同僚は何枚もの赤いTシャツを身にまとい、さらに顔面は赤い塗料で火山から噴き出るマグマを作り上げたのです。傍から見たら、頭のおかしい2人組の男にしか映っていなかったのではないでしょうか(笑)。
予選は名古屋の会場。出番が来るまでの待ち時間は、それまで味わったことのない緊張感に襲われました。数日後に同僚から私の携帯に電話が入ります。「校長!予選突破しました!」、割れんばかりの音声に私も興奮します。「よっしゃー!次は本戦だな!」、もうワクワクが止まりません。
いよいよ本戦会場、場所は後楽園ホールです。仮装の最終チェックが終わってホテルで寛いでいると、同僚の変化に気づきます。体調不良で表情も冴えない、ぐったりした状況です。ここまで順調でしたが、本番直前で最大の危機が訪れてしまいました。出場辞退の思いが頭の中を過ります。
当日は強行突破。同僚はいつもと変りなく、いやそれ以上の気迫が表に出ていました。MCの欽ちゃんが、「次は13番、噴火」とコール。二人は全力の演技、最後は同僚の体調不良が功を奏したのか、審査員に「君たちの疲れが、本当のマグマのように見えた」と絶賛。
結果は20点満点中、19点で合格。アイデア賞までいただき、賞金20万円を獲得したのです。収録日の約一か月後にテレビ放送、「あー、すごいことを成し遂げたんだなー」と実感。見終わった後、すぐに同僚へ電話。「ほんと、ありがとね」と伝えると、「こちらこそ、ありがとうございました」と感謝の倍返し。
現在は私と彼は別々の道を歩んでいて、滅多に会うことも話すこともありません。お互い健康サウナが大好きなので、一年に一回は一緒に行くようにしています。温泉に浸かりながら二人の会話に出てくるのは、「仮装大賞」のエピソード。あの頃の思い出は全く色あせることがないのです。
今振り返ると、私の好奇心旺盛なところ、挑戦することを止めないところ、そんな気質が昔からあったことに気づかせてくれます。経験のないことへの試みは、時には痛みも伴います。これが学びであり、経験に繋がると信じています。日々挑戦!日々成長!体力は衰えても、魂は全開で頑張ります!
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