定年後の未来を語るお客様から教わったこと

昨日の夕方、お会いしたお客様・田代さん(仮名)との商談での出来事です。田代さんは50代の女性で、まもなく定年退職を迎えるとのこと。すでにお子さんは独立し、現在はご夫婦で静かに暮らしておられます。そんな中で交わした会話が、私の心を大きく動かしました。

商談の合間に、ふと田代さんがスマートフォンを取り出し、「これ、ぜひ見てください」と見せてくださったのは一つの動画。そこに映っていたのは、リノベーションされたご自宅の一室でした。以前は物置として使っていたスペースを、奥様が提案し、ご主人のために音楽室として生まれ変わらせたのだそうです。

高い天井、洗練されたテーブル、そして存在感のあるグランドピアノ。まるでカフェかコンサートホールのような空間に、ご主人が嬉しそうにピアノを奏でる様子が目に浮かぶようでした。「夫がね、本当に嬉しそうなんですよ」と話す田代さんの表情は、やさしくて、穏やかで、こちらまで温かな気持ちに包まれました。

さらに話題は、ご友人のことへ。退職後に奄美大島へ移住し、サーフィンを楽しんでいるというお知り合いの話を嬉しそうにしてくださり、当初は感じられた将来への不安も、どこかへ吹き飛んだような笑顔になっていました。

この仕事をしていてよかった——。
そう強く思える瞬間でした。

私は、商品を販売することが目的ではなく、「誰かの人生が少しでも豊かになるお手伝いをすること」こそが、本当の仕事なんだと改めて気づかされました。そして、お客様の笑顔に触れるたびに、自分自身の将来についても深く考えるようになりました。どんなふうに時間を使い、どんなふうに生きたいか——。

お客様から教わることは本当に多く、私にとって大きな財産です。これからも、学び続ける姿勢を大切にしながら、ひとつひとつの出会いを大事にしていきたいと思います。