来週、長女は進路を左右する大きな挑戦に臨みます――日商簿記検定。
その日が刻一刻と近づくなか、机に向かう背中はこれまで以上に真剣さを帯びています。先生に質問をし、すでに合格した友達に教えてもらい、模擬試験を繰り返す。あらゆる方法で挑戦しているのです。
夜10時を過ぎると、リビングは私と長女だけの二人きりに。妻と次女は早寝の習慣で、すでに寝室へ。長女はタブレット、キーボード、電卓を机に並べ、白紙のA4用紙にメモを取りながら、ときおりため息をつきます。
私は横でノートパソコンを開き、文章を書く作業。しかし、見えない壁を越えられずにいる長女をただ見過ごすことはできません。画面を見ながらも、頭の中で彼女のためにできることを模索します。
――そうだ、図書館へ行こう。
まるで天から降ってきたようなひらめきでした。集中できる場所は、人を変える。同じ時間を過ごしても、環境によって生産性はまったく違う。だからこそ、私が仕事で大切にしている「快適な環境」を、長女にも体験してほしいと思ったのです。
向かったのは「みんなの森 ぎふメディアコスモス」。開館30分前に到着すると、すでに入口前には長蛇の列。後ろに並ぶ学生カップルの「現国の課題が全然終わってない」「それやばくね?」という会話が、まるで高原の風のように爽やかに耳に届きます。
開館と同時に皆が自習スペースへ速足で向かいます。長女はパソコン席、私は窓際の読書席を確保。違う場所で過ごす時間は新鮮で、それぞれの集中を邪魔しない心地よい距離感です。
しばらく自分の作業に没頭していると、長女から「あと5分で利用時間終わるよ」とLINE。慌てて席を離れ、パソコン席に向かいます。肩をポンと叩き、「どう?調子は」と声を掛けると、長女は満足げな笑顔で振り返りました。
「集中できたよ、スマホも見なかった」
「それは良かったね」
「模擬問題の点数を見て」
「おー、すごい!過去最高だね!」
「うん!簡単な問題だったから」
トランポリンのように会話が弾み、心が温かくなります。今日はこれだけで価値ある一日。潜在能力の一部を発揮し、成長の余白を見つけ、思わぬ集中力と出会えたのではないでしょうか。
図書館には、目標に向かって努力する人たちが集まり、その空気は自然と伝染します。長女もその一人として、「私はできる」という自己肯定感を抱けたはずです。
父として、この火を消さず、さらに大きくしていくこと――それが私の役割です。
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