ラーメンの味に、あの日のお爺ちゃんを想う

私はラーメンをよく食べます。外食、カップラーメン、袋めんなど食べるものに迷ったときは、だいたいラーメンを選んでいます。特に食べたくなるのは、テレビ番組でラーメンの映像を見たとき。グルメレポーターが美味しそうに麺をすする様子を見ると、私の食欲は一気に全開となります。

ラーメンと一口に言っても、その種類は実に多彩です。その中でも私が特に好きなのは、いわゆる「中華そば」。醤油味のスープがあっさりしていて、どれだけ飲んでも飽きがきません。気がつけば、丼の底が見えるまでスープを飲み干してしまうことも少なくありません。食後に少し胃がもたれても、それすらも愛おしい満足感の一部です。

私が何度もリピートしてしまうラーメン店があります。愛知県一宮市にある「第一旭 木曽川店」。自宅から車で10分ほど、気軽に立ち寄れる距離です。お店を知ったきっかけは、グルメにうるさい友人からのすすめ。信頼できるその友人の一言が、今では定番の一杯へとつながりました。

このお店のラーメンには、どこか懐かしさが漂います。醤油ベースのスープの表面には、うっすらと油が浮かび、ひと口すすればコクが広がります。チャーシューは脂身の少ない部分を使っていて、スープと一緒に食べると味のバランスが絶妙です。

「懐かしい味」だと感じる理由には、子供の頃の記憶があります。中学生の頃、私は夜間の学習塾に通っていました。夕食を済ませた後、お爺ちゃんがいつも車で送り迎えをしてくれました。塾の帰り道、決まって立ち寄ったのが、近所の中華そば屋さんです。

「お腹すいたー」と私が言えば、お爺ちゃんは何も言わず、その店の前に車を停めてくれました。店内で並んで座り、あまり会話もないまま、静かにラーメンをすすった記憶。けれどその静けさが、何よりも心地よかったのです。

お爺ちゃんは本当に優しい人でした。共働きの両親に代わって、送迎や夕食の準備など、いろんな場面で私を支えてくれました。今思えば、私がラーメンを好きになった理由は、味そのものだけではなかったのかもしれません。その背景にあったのは、お爺ちゃんとの穏やかな時間、そして思いやりの記憶。ラーメンをすするたびに、あの頃の温かい風景が胸に広がるのです。

お爺ちゃんは、私が大学生の頃に亡くなりました。今でも、感謝の気持ちを伝えられなかった後悔があります。時々お爺ちゃんのことを思い出し、無性に会いたくなります。今さらだけど素直に言いたい、「僕に優しくしてくれて、ありがとう」と。